英語圏児童文学に対する興味がさらに湧いていました
英語英文学科4年 菊池暖(2023年現在)
英語圏児童文学に対する興味がさらに湧いていました
英語英文学科4年 菊池暖(2023年現在)
IESプログラムの多くの2年生が履修するResearch & PresentationⅠⅡは、教員の専門に応じたセミナー形式の授業です。学生は3年次の専門研究の前にⅠ(前学期)とⅡ(後学期)で異なる先生のクラスを履修して、英語学や英語圏文化・文学への多様なアプローチ方法を学ぶことができます。
鈴木教授のResearch & PresentationⅠは英語圏児童文学を題材にしています。「プロット」や「テーマ」といった文学の基本用語を学び、グループで分析し、発表します。意見を出し合っていくうちに作品の作られ方が見え、そこに込められたメッセージを解読する楽しさも生まれます。
選書は年によって異なりますが、2022年度は『オズの魔法使い』(ボーム、1900)、『ライオンと魔女』(ルイス、1950)、『台所のマリアさま』(ゴッデン、1967)、『影とのたたかい』(ル=グウィン、1968)、『マチルダは小さな大天才』(ダール、1988)、『ウィーツィ・バット』(リア・ブロック、1989)の6冊を読みました。小グループで話し合ったり、担当する作品を複数で分析したりすることで、大きな気づきが生まれます。
Research & PresentationⅠを受講して鈴木先生の講義で児童文学を読み返したときは、その内容や構成に衝撃を受けました。
最初に読んだ『ウィーツィ・バット』では扱われている素材に驚かされ、『オズの魔法使い』に内包される当時のアメリカ社会の雰囲気や、『ライオンと魔女』に含まれる宗教的な場面、『影との戦い』の主人公が自身を受け入れる過程などにも惹かれました。『マチルダは小さな大天才』ではコミカルさの中にあるマチルダの純粋さに笑い、薄くて読みやすそうだなと思っていた『台所のマリアさま』はランプを灯す場面がとても温かくて思わず泣いてしまいました。
児童文学は私の心を想像の何倍も動かしました。そしてそれらを分析するときに、一筋縄ではいかず何度も同じチームの人と話し合ったのも覚えています。
文学を分析するということ自体もあまりやったことがなかったので、それもとてもいい経験でしたが、その対象が児童文学であり、そのなかに込められた思いやメッセージをすくい上げることが本当に楽しかったです。
前学期が終わる頃には、先入観は消え去って、英語圏児童文学に対する興味がさらに湧いていました。
(菊池暖 ゼミ生)
3年次の専門研究では、自分の好きな作品を選び、分析や先行研究調査をおこないます。
『若草物語』に描かれているのはどんな少女像? 『クローディアの秘密』で姉弟の家出はなぜ成功したのか? 『秘密の花園』で子どもたちを成長させたものは何? 小さな疑問を入り口にして先行研究を調べ、4年次になったらその問いをより深めて卒業論文にまとめます
人気の「ハリー・ポッター」シリーズは切り口がたくさんあります。魔法と言葉のつながり、しもべ妖精やマグルとの関係性から見える階級の問題、ハーマイオニーやマグゴガナル先生が示す女性像と家父長制など、ファンタジー作品が現実の写し絵になる一つの好例です。英語圏の国々の歴史や文化、社会事象とのつながりを見つけていくのは楽しい作業になるでしょう。
学校や家庭生活を土台にしたリアリズム作品も、読むと驚きがあるかもしれません。『ジョージと秘密のメリッサ』(ジーノ、2016)では、性自認が実際の性と異なるジョージが親友の助けを借りて自分らしさを獲得します。ブラック・ライブズ・マターをはじめとする社会運動も大きなインパクトを持ち、『オール・アメリカン・ボーイズ』(レノルズ&カイリー、2015)では、白人警官によるアフリカ系少年への暴行事件から抗議デモが起きるまでのうねりと、事件を目撃したアメリカの白人少年の心の動きを、二人の作家がそれぞれの視点から語ります。『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』(トーマス、2017)は、不審な動きをしたというだけで警官に射殺された友だちのために声を上げるアフリカ系の少女を描いています。
さまざまな子どもたちの物語を、一緒に読んでみませんか?
(鈴木宏枝)
1.2015年に鈴木先生がロンドンに行ったときのキングスクロス駅の93/4番線。昔はカートが刺さっているだけでしたが、やがてヘドウィグやトランクが追加され、今では係の人がホグワーツのマフラーをなびかせて写真を撮る手伝いまでしてくれます。
2.2022年度のResearch & PresentationⅠで、受講生は6冊すべてを読みました。
3.2021年度は個人で分析し、最終回にポスターセッションをおこない、付箋でフィードバックをおくりあいました。
4.2021年度のポスターセッションのあと、小冊子をまとめました。